この著者の作品を読むのは今回が初めてである。仲代達矢が中国残留孤児の父親役で出ていた「大地の子」はNHKでドラマ化されたものを見てとても感動した。「沈まぬ太陽」は事実をもとにしたものとのことでこの夏休みに全5冊を一気に読了した。実際著者はさまざまな取材に基づき小説にアレンジしたと各巻の冒頭で繰り返し述べている。テーマは昭和60年8月12日の日航機御巣鷹山墜落事故。これに日本航空(記述は国民航空)の人事、組織、業務、さらに政界、財界の動きをからませて展開する。主役は元労働組合委員長恩地元(おんちはじめ)。もちろん仮名ではあろうが実在の人物らしく、この本を著したきっかけはこの人物のことを小耳にはさんで大いに興味をかき立てられたのであろう。読み進めるほどに著者のエネルギーには圧倒される。関係者からの聞き取り、事故現場取材、ボーイング社への出張取材、パキスタン、イラン、ケニア、さらにニューヨークへの調査取材、そしてさまざまな文献・資料の読破など、一体何れ程の時間をかけているのだろうか。御巣鷹山ひとつ取っても、名前は有名だがそれほどの山という印象はないが標高1,639mの、久住ほどもある山であった。今では林道も通り手軽に登れるようになったそうだが。
昭和60年といえば個人的には福岡へ移って2年経ったころでこの年9月に次男が誕生した、当時は公団住宅住まい。520人が犠牲になった大変な事故ではあるが24年前のことで記憶はうすれてしまっていた。ちょうどこの文庫を読み始めた矢先テレビで慰霊登山とかのニュースが流れていたが何かの巡り合わせか。
読後印象に残った言葉を上げておく。河口博次 遺書 ボイスレコーダー これはだめかもわからんね おすたか会 SF券 CF券 特別販売促進費 10年先物予約 THE MOST DANGEROUS ANIMAL IN THE WORLD
この秋には渡辺謙主演で映画が公開されるとのことだが、スポットライトをどこに当てているのか今から楽しみである。次は横山秀夫の「クライマーズ・ハイ」を読んでみよう。